福岡市ではSSWの募集を開始しました。
それは,正規職員としての募集です。

しかも,驚くべきことは,
義務標準法上は定数外であるSSWを,
定数内に位置付けるということです。
そして,これを実現するために,
国家戦略特区の指定を受けています。

ただ,国家戦略特区の指定を受けても,
定数枠の上限を超える要望はしていません。

では,どうするのか?というと,
学校事務の集約処理で事務を効率化し,
事務職員を減らすという考えのようです。

結果として,事務職員の定数枠を使って,
SSWを採用することになりますね。

さて,ここで私たちが考えるべきことは,
福岡市は,なぜ,こう考えたのか?です。

福岡市の思いや考え方は,
「国家戦略特区ワーキング・グループ」の
ヒアリングの記録から読み取れます。

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福岡市の考え方の基本は,
「SSWを活用して全ての子供の未来を育む」
ということです。

それを実現するために,
・SSW専門人材の確保により,教育・心理・
 福祉の支援パッケージを確立する
・SSW活用により学校における働き方改革を
 推進する

ただし,SSWは非常勤の嘱託職員であるため
・勤務条件が不十分
・期待する人材の確保が困難

そこで,規制緩和により,義務標準法上の
定数内職員として任用したい。

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福岡市は,事務職員の定数枠を使って
SSWを配置するということですから,
この説明の裏を返せば...

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「事務職員を活用しても全ての子供の未来は育めない」

なぜなら,
・事務職員は専門人材ではなく,教育・心理・福祉の支援パッケージを確立できない
・事務職員を活用しても学校における働き方改革は推進できない

事務職員は義務標準法の定数であり,
・勤務条件は十分である
・事務の効率化により定数を割っても問題ない

ならば,事務職員の枠をSSWに充てた方が効率的である...

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私の捉え方は,かなり極端で,
かなり自虐的なものかもしれませんが,
皆様は,どのように感じたでしょうか?

前年度から,県費負担教職員制度にかかる
権限の移譲により,政令市の教職員給与は
学校の設置者である市が負担しています。

ですから,福岡市の件は,ある意味,
政令市ならではの発想だと言えます。

ただ,仙台市も政令指定都市ですから,
同じ考えをもつことも考えられます。

少し,極端な見方をしていたほうが,
気持ちに整理を付けられる(?)のかもしれません。

さて,改めて今回の件を見てみると,
事務職員は,教育に関わっていない,
子どもたちのための仕事をしていない,
そのように世間から見られていることを
実感します。

それは,教育や教育課程と距離を置いてきた
歴史がある以上,仕方のないことです。

それに,世間の考えをひっくり返すのは
そう簡単にできることではありません。

それでも,私が希望を感じているのは
東北ブロック研修会のアンケートで,
若手事務職員が教育課程を学びたいと
考えていることが分かったことです。

ということは,ベテランの事務職員は,
若手事務職員に教える必要があるので,
ベテラン事務職員もまた,教育課程を
学ぶ必要があると言えます。

そして...
事務職員は教育課程にかかわる職員,
事務職員は子供のための仕事をする職員
という,イメージ戦略が必要です。

それが,世間がもつイメージを
ひっくり返すことにつながります。

現在,研究推進部では,
教育課程にかかわることをとおして,
「事務をつかさどる」方策について
模索しているところです。

より多くの方々と,共に学びあいながら,
研究を進めていきたいと考えています。
ご協力のほど,よろしくお願いいたします。

SSWの話から,研究推進部の活動まで
話が飛躍してしまいましたが,
最後に,阿部前支部長の言葉を紹介して,
締めくくります。

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警察事務は,交通法規や交通違反の点数の
知識を持っている。

医療事務は,医療に関する法規や
診療報酬などの知識を持っている。

学校事務だって,同じように,
教育法規や教育課程の知識を持つ必要がある。

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シンプルだけど深く心に響く言葉ですね。

【参考資料】
◇平成31年度 福岡市立学校職員募集(拠点校スクールソーシャルワーカー)
http://www.city.fukuoka.lg.jp/kyoiku-iinkai/kyoshokuin/ed/SchoolSocialWorker.html

◇国家戦略特区ワーキンググループ 平成29年度 提案に関するヒアリング
(表の14番が,「スクールソーシャルワーカー(SSW)に係る義務標準法等の特例について」です)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/h29/hearing_t.html